Shoshi Shinsui




偶然と驚きの哲学

九鬼哲学入門文選

「哲学は驚きに始まり驚きに終わる」


『「いき」の構造』で知られる九鬼周造における哲学的主題「偶然性」。

主著『偶然性の問題』以降に書かれた偶然と驚きをめぐる諸論考が、九鬼晩年の到達点「偶然と驚きの哲学」という場所を示す。

それぞれが独立した一本として読める、入門に最適の短篇集。

   




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著者 九鬼周造
書名 偶然と驚きの哲学 九鬼哲学入門文選
体裁・価格 A5判並製 192p 定価2530円(本体2300円+税10%)
刊行日 2007年6月30日
ISBN 978-4-902854-31-2 C0010


著者紹介

九鬼周造 (くき・しゅうぞう)

1888(明治21)年〜1941(昭和16)年。哲学者。東京生まれ。男爵九鬼隆一の子。母波津は岡倉天心との親交のため離縁される。

東京帝国大学哲学科、同大学院を経て、1921(大正10)年から1928(昭和3)年、ドイツ、フランス留学。ドイツではリッケルト、フッサール、ハイデガーに学び、フランスではベルクソン、サルトルに交わる。帰国して、京都帝国大学講師就任。のち助教授、教授。ドイツ、フランスをはじめとする西欧の哲学・文学について当時一流の理解を持ち、日本へのハイデガー実存哲学紹介の先駆者となる。また、文学的センスを生かし、日本の伝統文化、詩的言語についての優れた考察を遺す。

著作には、最もよく知られる『「いき」の構造』(1930年)のほか、哲学的主著『偶然性の問題』(1935年)、哲学論文集『人間と実存』(1939年)があり、文芸方面の著作としては『文芸論』(1941年)、詩歌集『巴里心景』(1942年)がある。全集は岩波書店版『九鬼周造全集』(1980〜82年)。岩波文庫版に『「いき」の構造』(1979年)、『九鬼周造随筆集』(菅野昭正編、1991年)がある。

目 次

偶然と運命

偶然の諸相

驚きの情と偶然性

哲学私見

人間学とは何か

  *附録*

  偶然と驚き

  『偶然性の問題』序・目次・序説・結論

  九鬼周造略年譜



収録内容について

九鬼周造の「偶然性」に関する著作は『偶然性の問題』が主著であるが、本格的哲学著作である『偶然性の問題』および九鬼哲学全般への入門篇として、『偶然性の問題』刊行以後に発表された「偶然性」に関する諸篇を集めたのが本書である。附録として『偶然性の問題』の序・目次・序説・結論も収録した。『偶然性の問題』は全集第二巻収録であるが、本書発行現在、新本で一般に入手できる版には燈影舎刊行『京都哲学撰書第5巻 九鬼周造 偶然性の問題・文芸論』がある。なお、九鬼の「偶然性」に関する講義ノートや資料なども全集版に収められているが、これらは入門的関心に適うものではないとの判断からこの文選には収録していない(本書巻末略年譜の末尾に参考資料として全集版収録内容一覧を掲載した)。

本書に収録した諸篇は、『人間と実存』(昭和十四年刊)、『をりにふれて』(昭和十六年刊)、『偶然性の問題』(昭和十年刊)の何れかに収められたものである。なお、「偶然と驚き」は「驚きの情と偶然性」の要約版のようなものなので附録扱いとした。