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聴くヘルダーリン/聴かれるヘルダーリン
詩作行為における「おと」


音楽からの視点ではじめて明かされるヘルダーリンの詩作の根源

従来のアプローチとは一線を画し、詩の音楽性や、詩の音楽的要素と楽音化された音楽との関係を論じるのではなく、詩作行為において、「何か」としか言いようのないものをとらえることが「おと」を聴くという聴覚的な行為であることを論証。ピアニストであるドイツ文学研究者による画期的労作。
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著者 子安ゆかり
書名 聴くヘルダーリン/聴かれるヘルダーリン 詩作行為における「おと」
体裁・価格 A5判上製 288p 本体価格4000円(税別)
刊行 2019年3月
ISBN 978-4-906917-89-1 C0098

本書はヘルダーリンの詩作行為に、「おと」という側面から新たな光を当てる。詩人が「何か」に出会い、言葉にし、紙に書きつけ、そして作品となるに至るまでの全段階を詩作行為と見て、その全段階のうち、詩人が「何か」に出会い、言葉にし始めるまでの行為が、ヘルダーリンにとっては、「おと」を聴く行為であったことを本書は明らかにする。これは従来のいかなる研究にもなかった新しい視点であり、ヘルダーリンを深く捉え直すための試みである。

ヘルダーリンの詩作品は、ヘルダーリンが生きた18世紀および19世紀にはほとんど音楽化されることはなかった。しかし20、21世紀においては、最も頻繁に音楽化される詩人の一人であり続けている。詩作品とその音楽化のこのような関係は、他の詩人には見られない特異な事情である。従来の議論は、ヘルダーリンの詩が19世紀にほとんど音楽化されなかった理由を、その詩が難解であることや、緻密な構造を持つギリシャ詩型を音楽化する困難さに求めてきた。本書は作曲行為の深層を考察することによって、それとはまったく異なった理由を発見した。

作曲家にとって詩を音楽化することは、詩の構造や韻律に忠実に旋律を付けることや、詩の内容に応じた雰囲気を音楽で表現するといった行為ではなく、詩の「根源現象」「おと」に迫り、その「根源現象」「おと」を音楽化する行為なのであり、ヘルダーリンの詩は、詩の「おと」に迫ろうとする作曲家によってこそ音楽化されたのである。

目 次

序 章
第Ⅰ章 ヘルダーリンの詩作の概観と音楽活動
  第一節 ヘルダーリンの詩作の概観
  第二節 ヘルダーリンの音楽活動
第Ⅱ章 ヘルダーリンの詩へのアプローチ
  第一節 出版状況と研究状況
  第二節 ヘルダーリンの詩への音楽的アプローチ
  第三節 二〇世紀の音楽観と共振するヘルダーリンの詩の特徴
  第四節 付曲=詩の「おと」の音楽化
第Ⅲ章 ヘルダーリンの詩作行為
  第一節 ベルトー/詩作プロセスと作曲プロセス
  第二節 『詩的精神のふるまい方について/詩人がひとたび精神を操ることができるなら』
  第三節 『表現とことばのためのヒント』
  第四節 音調の交替
第Ⅳ章 ヘルダーリンの詩の「おと」を聴く作曲家
  第一節 ヘルダーリンの詩の音楽化の試み/アイスラー
  第二節 ヘルダーリンの詩の音楽化の試み/シェーンベルク
  第三節 ヘルダーリンの詩の音楽化の試み/ノーノ
  第四節 ヘルダーリンの詩の音楽化の試み/ライマン
終 章
  参考文献/あとがき/索引


●著者紹介

子安ゆかり 東京都出身。ピアニスト、武蔵野音楽大学専任講師。お茶の水女子大学、玉川大学、早稲田大学非常勤講師。武蔵野音楽大学卒業、ケルン音楽大学大学院修了(歌曲演奏法)。ケルン総合大学哲学部を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門分野は表象文化論、音楽学、ドイツ詩。共著に『貴志康一と音楽の近代』(青弓社)、論文に「20世紀音楽に共振するヘルダーリンの詩法」(『言語情報科学』第7号)、「付曲するとは、いかなる行為であるのか――Vertonenをめぐる一考察」(『武蔵野音楽大学研究紀要』第47号)など。ピアニストとしての活動も盛んであり演奏会多数、CD「岩の上の羊飼い」(MM1216)リリース。