Shoshi Shinsui




死生観 史的諸相と武士道の立場

死生観史論の古典――
キーワード死生観はこの書から始まった(解説・島薗進)


伝統的議論の終着点/近代的議論の出発点。

1)武士道の価値観を説きながら、その立場を比較文化論的に定位。

2)科学の時代に武士道死生観を評価する意味のありかを考察。

3)おのおのの死生観を語る先人の生の言葉、詩歌をふんだんに引用。

4)伝統的価値観と今の価値観の分岐点を探るよすがに。

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(加藤咄堂の他の本 『味読精読 十七条憲法』 のページへ→)
   



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著者 加藤咄堂
書名 死生観 史的諸相と武士道の立場
体裁・価格 A5判上製 288p 定価3630円(本体3300円+税10%)
刊行日 2006年9月30日
ISBN 4-902854-19-8 C0014


著者紹介 加藤咄堂 (かとう・とつどう)

1870(明治3)年生、1949(昭和24)年歿。本名は加藤熊一郎。咄堂は号。仏教・儒学などの東洋思想を土台とした修養思想の啓蒙家として活躍。出版書籍は200点以上にのぼり、最盛期には年間200回以上の講演を行ない、難解な思想や古典を平易に説き人気を博した。

丹波亀岡の格式高い武家に生まれ、幼時は儒学を修めるが、士族没落の時代ゆえに苦学。代用教員を務めたあと法学、英語を学ぶ(英吉利法律学校)なかで、築地本願寺の積徳教校(僧侶養成学校)で教える機会を得、生活費捻出のための翻訳・文筆業に携わったことから仏教ジャーナリズム・仏教界に縁を結び、たちまち仏教の大要を理解する。洋学志向で仏教思想のふるわない時代、仏教界は大衆向けの平易な解説のできる人物を欠いていたが、時代状況をふまえて仏教の要旨を縦横無尽に説く咄堂は一躍仏教講演の第一人者となり、講演と著述で生計をたてるようになる。当時の自己を振り返り、「泰西模倣の時代の趨勢に慨然たるものあり、幼時の儒学勃然として心に萌し、東洋研究の結果は仏典に及び…」と述べている。

20代前半で当時の一流仏教新聞『明教新誌』主筆に迎えられ、追って大内青巒ら仏教界の大物たちがその才を評価するようになる。のち『中外日報』主筆、曹洞宗大学(のちの駒澤大学)、東洋大学の教職につき、また教化団体連合会の理事として活躍(内務大臣後藤新平らの信頼を得て、乱立状態にあった教化諸団体の糾合に尽力)。

代表的著作『碧巌録大講座』(15巻)『修養大講座』(14巻)。諡号(戒名)浄名院大智咄堂居士。

解説者紹介 島薗進 (しまぞの・すすむ)

東京大学大学院人文社会系研究科教授。2002年度より東京大学大学院人文社会系研究科を中心に実施中の21世紀COE研究拠点形成プログラム《生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築》拠点リーダー。最新著作『いのちの始まりの生命倫理』(2006年、春秋社)ほか、編著書多数。




目 次

序(村上専精)

増補 死生観 自序

第一章 死生観の変遷

1 人生の大問題
永久の問題/不死の霊薬/無常観/人生の目的/科学哲学と宗教/本書の目的


2 古代人類の死生観
魂魄/夢/幽霊/野蛮人の信仰/地獄極楽/各宗教の所説/エジプト古教/支那思想


3 大和民族の死生観
二種の霊魂/人身犠牲/儒教/仏教の感化/決死の精神/迷妄の信/往生要集


4 武士の死生観(上)
法然上人の死生観/平重盛の死生観/遁世の気風/西行、文覚/佐藤継信、那須宗高/禅の教化/北条時宗/日蓮上人の人格/北条武士の最期/南朝公卿の辞世


5 武士の死生観(下)
楠正成/新田義貞/菊池武時/大田道灌、上杉、武田、豊臣、蒲生、佐々、大内、明智らの辞世


6 女性の死生観
無常観/未来の生存/袈裟御前/男性的死生観/武士の妻/気概


第二章 武士道と死生観

1 徳川時代の死生観
文教の勃興/禅と武士道/伊藤仁斎/物徂徠/佐藤一斎/儒者流の説明/貝原益軒/新井白石


2 山鹿素行の死生観
素行の修養/配所残筆/遺書/天地一致の妙用/復讐/死節/大石良雄/未生已前の一句


3 白隠禅師の死生観
死字の歌/大死一書/内観工夫/病中の死字/白隠禅師の逸話/生死は事実


4 大塩中斎の死生観
平八郎の略伝/洗心堂/入学の盟/丁酉の変/滅を舎(す)てて不滅を取る/死生の工夫/宇津木矩之丞


5 吉田松陰の死生観
革命の気運/象山と松陰/死而後已/死と四時の循環/七生説/生死の観


第三章 古聖の死生観

1 釈迦の死生観
死生観に対する苦心/無常観/十二因縁/宇宙精神/生死則涅槃


2 キリストの死生観
神の子/キリストの死/肉に死し霊に生く/永生/復活/身命の犠牲/末日審判


3 孔老の死生観
現世主義と虚無恬淡/不知生曷知死/天命説/老子の虚無/荘子/列子


4 ソクラテスの死生観
ソクラテスの哲学/死生の巷/死生観/霊魂不滅論/プラトン/中世哲学


第四章 近世の死生観

1 近世哲学の一瞥
デカルトとベーコン/スピノザ/ライプニッツ/カント/ヘーゲル/ショーペンハウアー/ハルトマン/スペンサー


2 科学の死生観
生命の始源/原形質/単細胞/進化の理/死とは何ぞ/物質不滅/勢力恒存


3 科学に対する反動
科学の力/目的論と機械論/道徳宗教の基礎/科学と哲学/神秘主義


第五章 死生問題の解決

1 霊魂の断滅
霊魂の滅不/未来生活の有無/転生/死後生活の倫理的価値


2 永久の生命
生命の継続/遺伝/社会的生命/肉に死し霊に生く/永久の生命


3 人生の真義
人生の譬喩/活動主義/自殺/天命


4 運命の是非
国家の運命/偶然の事実/霊妙なる精神/個人の運命/死生と運命観


5 死の興味
生死一如/社会的生命/天命/断滅未来の生/精神の安慰/いかに死に処せしか/死の興味


補遺 死生雑話

生命の始源  生物学者のいわゆる不死  アリストテレス  ストア学派  エピクロス  中世哲学  スピノザ  楊子  抱朴子  宋儒  王陽明  ブルーノ  ルーテル  道元禅師  エマーソン  死生の理  死の覚悟  日親上人  武士道  室鳩巣  僧月照  西郷南洲  木戸孝允  文人と武人  霊魂論




跋(大内青巒)

解説 死生学研究と死生観 ―― 加藤咄堂と死生観の論述 島薗進